CAD/CAMは経営のツール
〜データの一気通貫でものづくりを変える〜

コダマコーポレーション株式会社 代表取締役 社長小玉 博幸

1. はじめに

私がCAD/CAMビジネスに身を投じて30年以上が経った。
30年ともなると、日本のCAD/CAMビジネスの創成期からこの業界にいることになる。その経験を通じて改めて考えることは、CAD/CAMシステムをうまく使いこなし、生産性を向上させるためには、経営者がいかに真剣に取り組むかが重要だ。残念ながら日本では、CAD/CAMシステムを現場の担当者に任せて選定して使用しているため、目を見張るような生産性の向上を実現できている企業が少ない。工作機械の選定に注力する経営者はいても、機械の稼働率を上げるためにCAD/CAMシステムを真剣になって選定している経営者にお目にかかることはきわめて少ない。

CAD/CAMシステムは使う人によってその効果が変わってくる。担当者に任せればその担当者の範囲内で、課長に任せればその担当する課の範囲でしか効果を発揮できない。つまり、会社全体の効率化、生産性向上を実現したいならば、経営者が担当するしかないのだ。機械を使いこなし、稼働率を上げるためにはCAD/CAMシステムが必要不可欠なのは言うまでもない。つまり、CAD/CAMシステムこそ、経営管理システムや生産管理システムと同じように「経営のツール」として、経営者みずからが真剣になって選定し、活用しなければならないのだ。

私は、CAD/CAMビジネスを通じて5,000社近いものづくり企業を見てきた。その中でも、総じて生産性を上げている企業はCAD/CAMシステムを経営者が真剣になって選び、経営者みずからが指揮をとって活用していた。CAD/CAMを活用すればものづくりが変わる、会社が変わる―これを実現するからこそ、CAD/CAMは経営のツールなのである。

そこで本連載では、今回から約半年にわたり「CAD/CAMは経営のツール ~データの一気通貫の実践でものづくりを変える~」というテーマで、私どもの考える理想のものづくりとそれを実践する方法を皆さまにご提示していく。

2. コダマコーポレーション株式会社の紹介

まず、私どもの会社コダマコーポレーション株式会社(図1 以下コダマコーポレーション)をご紹介する。
コダマコーポレーションは1989年の設立以来、日本の製造業のさらなる発展を願い、生産性を飛躍的に向上させるためにCAD/CAM/CAEシステムやサービスを提供してきた。
1996年には、3次元統合CAD/CAMシステム「TOPsolidシリーズ」の販売を開始し、導入コンサルティング、システム構築、サポート、教育、運用コンサルティングを行なっている。発売から14年が経ち、国内の導入企業は3,000社を超え、ライセンス数も10,000ライセンスを突破した。

特に、導入していただいた企業様にできるだけ早く活用していただくためのサポート、教育セミナーやコンサルティングなどのサービス面の充実に注力している。
図1 現在の本社の外観
現在、社員数は120名を超えている(図2)。マスコミ関連の方からは、「CAD/CAMメーカーで100名を超えるというのは多すぎではないですか」と聞かれることがあるが、お客様に十分なサービスを提供するためにはまだまだスタッフが足りないと私は考えている。今後もスタッフをさらに増強し、さらに製品やサービスの向上を進めていく。
また、近年多くの企業から寄せられる「最新の5軸マシニングセンタや複合加工機を活用できない!」というご相談を受け、それを解決するため2009年に加工技術研究所を開設し、CAD/CAMベンダーとしての経験をベースに、5軸マシニングセンタや複合加工機を最大限に有効活用する加工技術の研究をスタートした。加工技術研究所とその取り組みについては、改めて詳しくご紹介する。
図2 現在の事務所内の様子

3. CAD/CAMビジネスとの出会い

私がはじめてCAD/CAMと出会ったのは、大手の製図機メーカーに勤めていたころだった。当時はまだ多くの企業が製図作業を手書きで進めていた。製図機械といえばドラフターという時代だった。2次元のCADシステムは存在していたが、使用している企業はまだ少なかった。3次元のCADもあったが、1ワークステーション当たり1億円以上もする大変高価なものだったため、導入する企業も限られていた。

また、CADシステムは設計室ではなくコンピュータ室に設置され、コンピュータの専門家のサポートのもとで選ばれた設計者が使用するものだった。一方で、CADを使用してできることも限られていた。しかし、皆新しいCADというものに惹かれ、それをものにしなければならないという思いからシステムを導入していた。そのようなものづくりの環境の中で、会社が新規事業としてCADのビジネスを立ち上げることになり、私はその責任者に任命されたのだ(図3)。

当時はほとんどのCADが海外製で、しかも日本語の資料も関連の文献も少ない中で販売をしていた。つまり、当時は売る側も買う側も暗中模索の状態だった。当時、コンピュータの処理速度は遅く、CADの機能が十分でなかったこともあり、生産性を向上させるという本来のシステムのあるべき役割からはかけ離れていた。つまり、CADは先進のシステムと言われつつも、図面を清書する道具にしか過ぎず、いくら使用しても生産性は向上しなかった。それでも多くの人が、その新しいツールの可能性を信じて飛びついた。
図3 前職で販売していた2次元CADシステム「Easydraf 2」

4. 新しいものづくりの発想との出会い

当時、多くのCAD/CAMベンダーはCAD/CAMを生産性向上のためのツールとしてより、次世代の設計・製図のツールとして紹介していた。一方で、当時から私はそのような点には興味がなかった。むしろ、自分たちが提供するシステムがお客様の生産性向上にどのように貢献できるかということを常に考えていた。

そのようなときに出会ったのが仙台でエンジニアリングプラスチック金型の設計製作をされていた遠藤氏だ。私はCAD/CAMビジネスを通じて多くの人との出会いがあった。今の自分があるのも、その多くの人たちにいろいろなことを教わり、支えられてきたからだと思う。遠藤氏はその中でも、特に多くの学び、気付きを与えてくれ、影響を受けた人であった。「CAD/CAMは経営のツール」という私の考えを実践していた最初の人である。
先程も述べたように当時のCADは図面を清書する道具にしか過ぎないと考えられていたため、いくら活用しても生産性は上がらなかった。そのような中で、遠藤氏が実践していたのはCADで作成したデータを加工で利用することだった。CADで作成した図面には加工で必要な基準寸法しか記入されていなかった。

このCADデータをDXF形式のデータに変換してCAMに渡す。次に、CAMでそのデータに加工条件などを付加してツールパスを作成し、DNCを経由して工作機械を動かしていたのだ。つまり、上流の設計で作成したCADデータを下流の製造でフルに活用していたのである。また、すべての工作機械をCAD/CAMで制御していたため、機械1台に一人のオペレーターが必要だとされていた時代に、機械からNCデータを作成するためのソフトウェアを外し、段取り以外は無人で機械を稼働させていた。機械一つ一つに専任のオペレーターを張り付けるのは経営の無駄だと遠藤氏は25年以上も前から考えていたのである。当時は高価だが生産性のきわめて低いCAD/CAMシステムと最先端のNC工作機械を融合させることでお互いのデメリットをなくし、効果を上げていたのだ。 これこそまさに「先進の発想」だったと私は思う。

遠藤氏はこのCAD/CAMと機械を融合させる「データの一気通貫」で、金型の穴あけ、2軸加工を社内で行なっていた。それ以外の3次元曲面形状の加工は外注だったのである。自社の本分は、精度が必要な穴あけ、2軸加工のみに注力し、それ以外は外注化する。まさに、役割を明確化し、無駄を省いた経営であった。外注に依頼する際も、金型の部品とわからないようにコマ分割し、詳細な図面を添付して発注をしていたのである。このように遠藤氏は「CAD/CAMは経営のツール」と考え、実践していたのである。当時、「CAD/CAMの勉強会」という名のツアーを組み、多くのお客様を連れて遠藤氏のもとを何度も訪問した。多くの人が異口同音に「詳細な寸法が記入されていない図面で加工などできるわけがない」と言っていた。

これに対して、遠藤氏は「高価なCADを図面の清書だけに使うのではメリットはない。CAMと連携することで図面の作成時間が短縮できる。CADデータをCAMで利用することで、生産性が上がる」と答えていた。いまでも、工作機械に直接NCデータを打ち込んで加工を行なっている企業も少なくない、ましてや25年以上も前にこのような考え方を理解できる人はほとんどいなかった。
しかし、中にはその考え方に触発され、大幅に生産性を向上させた企業もあった。現に、先日15年ぶりにお会いしたプレス金型メーカーの社長さんが「遠藤氏のものづくり」を導入して大変利益を上げさせてもらったと懐かしく話をされていた。先にも述べたが、当時の多くのCAD/CAMビジネスは、会社からシステムを売れと言われたから売っているだけで、バグがあったら対応するくらいの物売り営業に過ぎなかった。

しかし、私は遠藤氏の考えに触発されて、「ものづくりとはこうあるべきだ」「CAD/CAMとはこう運用すべきだ」といった提案型の営業に突き進んでいった。こうして私は遠藤氏との出会いにより、「データの一気通貫」という考え方を学び、今のコダマコーポレーションの骨格となる考え方を形成した。

5. コダマコーポレーションの設立

「データの一気通貫」を実践するためには、CADとCAMの連携が必須であった。しかし、私が当時勤めていた会社ではCADしか扱っていなかったため、「データの一気通貫」を提案するにはCAMを販売するか、新たにCAD/CAMを開発する必要があった。また、当時多くのお客様からも「CADはうまくいったが、CAMはどうしたらいいのか」「CAMも何とか面倒を見てほしい」と責任者の私はよく言われた。

お客様の本当の生産性向上に役立ちたいと常々考えていた私は、会社にCADとCAMの連携の重要性を訴えて、CAMの販売開始もしくは新たなCAD/CAMの開発を直談判したが、会社は動かなかった。 私が、新たなCAD/CAMの開発を前職の会社に提案して25年が経過する。しかし、いまだ「データの一気通貫」を実現できるCAD/CAMは、世界中を探しても後程紹介するフランスのMissler Software社が開発したTOPsolidシリーズしかないのである。

今から考えると相当な無理難題を提案したことになる。当時、「このまま会社に留まりCADの仕事を続けても、これ以上お客様のお役に立つことはできない」、そう考えた私は「データの一気通貫による生産性の向上を目指して、新しいものづくりの提案のできる」会社を作りたいと考え、1989年の1月にコダマコーポレーション株式会社を3名の仲間とともに設立した(図4)。
図4 設立間もない事務所での著者(左)と全社員
設立後最初に取り組んだのは、アンドール株式会社殿が開発した2次元CADシステム「CADSUPER」とCAMシステム「CAMCORE」での「データの一気通貫」の提案であった。この2つのシステムの間ではデータの変換は必要なかった。CADで作成した図面データがそのままCAMで利用できた。この「データの一気通貫」により、多くのお客様に生産性が向上したと大変評価をいただいた。

遠藤氏が実践していた2次元のCADとCAM間での「データの一気通貫」が多くのお客様で実現したのである。しかし、この2次元のCAD/CAMシステムでの「データの一気通貫」の提案は、コダマを設立して5年目の1994年にピークを向かえた。私どもとお取引をいただいている先進のお客様はこのころになると2次元のCAD/CAMシステムを卒業して次の取り組みを始めていた。次に、お客様から提案を求められたのが3次元のCAD/CAMシステムである。

3次元の曲面形状をいかに早く効率よく加工するかに取り組むためである。それまで、3次元の曲面形状を処理するのに使われていたのが自動プロ(自動プログラミング装置)であった。装置固有のプログラム言語を習得する必要があり、誰でもが簡単に扱える代物ではなかった。私どもは、これらのお客様の問題を解決するために、自動プロの替わりに丸紅ハイテック株式会社殿(当時。現・丸紅情報システムズ株式会社殿)が取り扱っていた3次元CAMシステム「CAMAND」を取り扱うことにした。
ここでも、多くのお客様に新しいものづくりが実現して生産性が大幅に向上したと大変評価をいただいた。しかし、CAMANDではCADとCAMとの連携は実現していなかった。すなわち、私が考える本当の意味での「3次元でのデータの一気通貫」はこの時点ではまだ実現できていなかったのである。

この記事は、工業調査会の『機械と工具』 2010年7月号に掲載されました。


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